医療情報を医療従事者に伝えるデザインとクリエイティブの精度

【全文】DeNA守安社長・南場会長らによる記者会見 キュレーションサイト問題の経緯と今後の対策について説明(Logmi・ログミー)

 医療情報は間違いが許されず、内容を精査するため、二重三重のチェック体制、薬学など医学的な専門知識があるライターだけではなく、その分野を熟知した大学教授や専門的な研究者の監修が必要なのが当然です。

 決して間違いのない形で情報を発信するとは、そういったことなのです。一般消費財の仕事に携わっているライターやデザイナーなど専門知識や経験がないものには、うんざりするほどの工数と精度が求められます。「ヘルスケアはお金になる」などと勘違いして、形だけ真似ようとするとこういったことが起きやすいのですが、これだけ大規模かつ悪質なものは例をみないと思います。

 私はデザイナーとして、医療情報を一般や医療従事者に伝える会社にお力添えさせていただいており、知人の医師たちに現場の難しさや体験を伺うこともあります。また医療用医薬品の広告業にも携わっており、業界特有の難しさを幾度も味わってきました。だが、関わっている方々は優秀かつ誠実で、専門知識を社会的に活かそうと裏方で汗をかく人々であることに間違いありません。

日本的ITベンチャーの気風と医療の親和性

 一方で、IT系のスタートアップのエンジニアやチームをいくつか知っていて力も貸しています。みな知性と才能豊かであり、ヘルスケアにおいて日本に足りない何かをアイディアとITで補えないかと野心的に考えています。

 しかし、話せば話すほど日本においては、この間を埋めるものがなかなか難しい。
特に医療情報という分野においては、精度の高い情報を確実にリリースすることと、人間そのものに寄り添うデザインとエンジニアリング、さらにそれらをビジネスとして成立させることのハードルは決して低くはありません。それはデザイナーとしての私の仕事でもあるのですが。

 今回の件は論外ですが体感する限りでも、日本的ITベンチャーの気風と医療の親和性は決して高くないし、成長分野の一つとみるばかりではない気概や志が必要です。私に「ヘルスケアは宝の山」といった浅薄なクリエイターや会社もいたし、これからも増えるでしょう。しかし一般的なクリエイティブとは違い、一人や一つの会社では背負いきれないほどの大きな責任を伴う場合がある、ということも心して取り組んだ方がよいと思います。