ChatGPTは医師よりも共感的? 研究結果から見える可能性と限界
近年、急速に注目を集める対話型AI
「ChatGPT」。医療分野でも、オンライン診療の拡大や患者とのコミュニケーション改善への活用が期待されています。実際に「ChatGPTが医師よりも共感的な回答を示した」という研究結果も報告されており、話題になっています。以下では、その研究で明らかになった点や、ChatGPT活用のメリット・限界をまとめました。
ChatGPTは医師よりも“質が高く・共感的な”回答を提供?
アメリカの研究では、ソーシャルメディア「Reddit」の医療相談フォーラムに寄せられた195件の質問について、医師の回答とChatGPTが生成した回答を比較し、合計585件の評価が行われました。その結果、
回答の質:ChatGPTの回答が良いと評価された割合は約78.5%、医師は約22.1%
共感性:ChatGPTは医師の9.8倍も“共感的”と評価
これらの数値から、「人間の医師よりもAIの方が質と共感性に優れた回答を提示する場合がある」という興味深い事実が示唆されています。
具体例
例えば、「目に漂白剤が入ってしまった場合の失明リスク」について、ChatGPTは患者を気遣う表現を使いつつ、「具体的にどのような処置が必要なのか」を丁寧に提示。一方、医師の回答はシンプルに「目を洗い流して必要に応じて対応を」というもので、言葉数の少なさから共感性が低く見られたようです。
ChatGPTが患者に与えるプラスの影響
安心感や信頼感の向上
ChatGPTは丁寧かつ不安を和らげるような表現を盛り込む傾向があり、患者にとってより受容しやすい回答になりやすいとされています。
24時間いつでも対応可能
オンライン診療や遠隔医療が普及する中、患者が好きなタイミングで質問できるメリットは大きく、医療従事者の負担軽減にもつながる可能性があります。
研究結果の限界と今後の課題
一方で、こうした研究にはいくつかの制約があります。対象が「オンラインフォーラム投稿」である点や、評価者の基準が限られている点などから、この結果をそのまま実際の医療現場に当てはめるには慎重な検討が必要です。また、ChatGPT自体も以下のような課題を抱えています。
個別対応が難しい
AIは大規模データをもとに回答を生成するため、患者一人ひとりの背景や状況に合わせた緻密な対応はまだ難しいと考えられます。
非言語的コミュニケーションが不可能
テキストベースでは表情や声のトーンなどを通じた共感表現ができないため、患者によっては「本当に分かってもらえているのか」という不安が残るかもしれません。
医療知識・経験の限界
ChatGPTは開発途上であり、医療行為に必要な専門知識や実地経験はありません。あくまで参考情報として活用すべきです。
筆者自身もChatGPTを日常的に使用している中で、「ChatGPTは鏡のように対話者の水準に寄り添う印象があり、良くも悪くも聞き手のレベルに合わせられる」と感じています。こちらが専門的な質問をすれば比較的正確に、それほど知識がない状態で質問しても相手の理解度に合わせて平易な説明をしてくれるため、「共感的」だと感じられやすいのではないでしょうか。
医師の共感とChatGPTの共感はどう違う?
対面での個別配慮が可能か
医師は患者を直接診察し、生活背景や心身の状態などを踏まえた助言を行えます。ChatGPTはそれが難しい反面、幅広い情報を瞬時に提供できます。
非言語コミュニケーションの有無
医師は表情や声のトーン、身体的接触など多様な方法で患者を安心させることが可能。一方、ChatGPTの“共感”はテキスト上の表現に留まります。
経験や知識の厚み
医師は長年の学習や臨床経験を積み重ねていますが、ChatGPTは学習データに依存し、正確性やアップデートされた情報の保証が課題になります。
医療を支援するツールとして
研究によると、ChatGPTは医師に比べ「回答の質や共感性が高い」と評価されるケースがあります。しかし、これは「医師の上位互換」として評価されたわけではありません。個別の診療や感情面のケアなど、医師ならではの役割は依然として不可欠でしょう。
ChatGPTの得意分野
- 幅広い一般的な知識を活かして「丁寧・細やかな説明」をすばやく生成
- 患者の不安を取り除きやすいテキスト表現
- 医師の得意分野
- 病歴や患者背景を踏まえたオーダーメイドの対応
- 非言語も含むコミュニケーションや治療方針の決定
今後も研究を重ねることで、ChatGPTの限界が克服され、より適切な活用法が模索されるでしょう。医療従事者の業務を補完し、患者とのコミュニケーションを充実させる一助として、ChatGPTの可能性は大いに注目に値します。
参考文献
- 人間の医師よりもChatGPTの方が質が高く、患者に寄り添った回答 …
- 【JAMA Intern Med】ChatGPTは医師よりも質の高い共感的な回答を生成 - HOKUTOアプリ
- 対話型AI「ChatGPT」が生成した「患者への回答」は人間の医師による回答より好まれることが研究で判明 - GIGAZINE
- ChatGPTは患者への説明が医師よりも上手 - ケアネット
- ChatGPT はどこまで信頼できるか ― AI を利用してアイデンティティとセキュリティを確立する - DigiCert
- チャットGPTで悩み相談? メリットとデメリット - LINE・HP・デザイン制作会社Toiro(トイロ)
※本記事は複数の研究・記事を参照して作成したものであり、医療行為を目的とするものではありません。個別の症状・治療に関しては必ず医師にご相談ください。