ミケランジェロを思い出す時

パーキンソン病の薬が切れかけてくると、ジストニアの症状が強くなり背中に反り返るようにこわばり、思うように動けなくなります。身体が制御を外れていくような感覚があります。そんな時によくミケランジェロの詩が頭に浮かびます。
「あごは天井に向かって突き上がり、首筋は背骨へ沈み込んでしまい、胸骨はまるで楽器の胴のように張り出してくる。 そして背中は、シリアの弓のようにぴんと反り返っている。」

システィーナ礼拝堂の天井画

システィーナ礼拝堂の天井画を描いたミケランジェロは、もとは彫刻家でした。慣れないフレスコ技法、4年にも及ぶ作業、上を向き続ける不自然な姿勢、教皇からの厳しい催促——彼を取り巻いていたのは、過酷な環境でした。
「首は胸につき、顔はペンキが落ちてカラフルになり、背中は弓のように反り返った」
友人に送った手紙には、首や背中の痛み、視力の低下、思うように進まない焦りが綴られています。そうした積み重ねがあったことを知ると、彼の作品が少し違う見え方をしてきます。
ジストニアで身体が勝手に反っていくとき、自分の意思とは無関係に進む感覚が重なって見えるのかもしれません。
もちろん、私の病状とは別の種類の苦しみです。それでも「望まない姿勢を強いられつつ、色や形に塗れながら、それと格闘し向き合い続けた」という点に、どこか通じるものを感じます。