サバイビング・デザイン

 かつて柳宗理のアノニマス・デザインという概念に惹かれていました。匿名性のデザイン。無名のデザイン。それは文化的な背景から立ち上がってくる、無意識的なデザインの形です。

 アノニマス・デザインは私が求めていた匿名性とは少し違うもので、私のものの考え方に影響を与えたものの、哲学にはなりませんでした。今、そこから一歩離れて、自分のデザインに対する考え方の根底にあるものをサバイビング・デザインと名付けたいと思います。デザイン史の影のようなものとして。

 それは一つの冗談として、ずっと頭の中にあった概念でした。私はいつだって生き残ることに必死で、それを茶化して考えていたからです。それが突然、心の中で大きな位置を占めてきました。

【surviving】[形容詞][限定用法の形容詞]生き残っている,残存している.

 適者生存。生き残るためのデザイン。そのために進化するデザイン。必然性はなくとも、結果として生き残ったデザイン。新しさではなく、むしろプロヴィンシャルであるデザイン。次の世代に自分の遺伝子としてデザインを繋ぐこと。匿名ではないが、無名のデザイン。

 自分の小さな家族を守る最小限、最低限の単位として。自分を信頼してくれる人のために、その場限りで役立つデザイン。毎日、ポストに入ってくる不動産チラシのように完璧で、100円ショップのビニール傘のように透明に、要求された機能を果たす。

ピージーの会社案内

 本来は封筒などに使われるとても薄い紙に印刷しており中面、裏表紙と透けて見えます。表面は光沢があるのですが中面はザラついた質感があり、手触りで違いを愉しめます。極薄のレイヤーを重ねたようなイメージは、ある意味とてもデジタルなものに感化されて、それをアナログな表現として「立体的に」写し取ったものです。

 クライアントに渡したら、「もう何枚かもらっておいたら、配っておくよ」と言われ、会社案内というよりはチラシのようです。昔あったペットボトルの宣伝ではありませんが、クシャッと丸めて捨てていただいて、後には物質的なものは何も残らない、軽さのデザイン。それでも手にとっていただいた方の心には、何か残せると考え、本当に大切なことはそういったことではないかと考えています。

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