仕事の合間を縫って宣伝会議さんが主催するインターネット・マーケティングフォーラム2016に行きました。特に興味があったWebやメール、CMSなどを使ったCRM(Customer Relationship Management)を中心に、メディカルやヘルスケア領域を含め最新の情報や知見を学び、個人的にはマーケティングとクリエイティブの住み分けをはっきりさせることもできました。
クリエイティブとマーケティングというものを対立概念のように捉える慣習は未だに残っており、マーケティングの勉強などしないのが、これまでのデザイナー観だったのではないでしょうか。古くからデザイナーは良い物を観て感性を磨くべきと云いましたが、マーケティング理論や優れたビジネスモデルではなく、書画骨董の話だったりします。デザイナーがアーティストと混同される状況は今でも大して変化はなく、デザイナー側も「芸術」や「表現」のカテゴリに自分たちが括られるのを暗黙の裡に了解しているのが現状です。
コンテンツをゼロに近いところから生み出そうとするアートと、本質的に経済活動として行われるクリエイティブというものは立脚点が違うので、デザイナーはマーケティングをより意識して、データが導き出す客観的事実というものを積極的に取り込む必要があります。マーケティング発想の軽視は、日本に根強く存在するクリエイティブを娯楽=エンターテイメントの視点から捉えるところからやってくるように思います。よく「日本人は真面目」と言われ、その反動なのか、ことクリエイティブに関しては情感に訴えるようなわかりやすい娯楽性(あるいは癒やし)を求める傾向が強いのです。
クリエイティブの本質が「喜び」や「驚き」などのエンターテイメント性に属するものかどうかは、もう少し掘り下げられてもよいと思いますが、少なくともそれが応用できる範疇は文化的な領域に収まりきらず、成長産業であるメディカル・ヘルスケア分野を始めとする実用実学を含むようになってきています。
客観的に数字で測るマーケティングがより影響力を増してくる時代です。しかし、それでも旧来の意味でのデザイナーの領域が、その本質的な部分まで侵されることはないと考えております。それはアイディアの問題であり、人の心に触れるものを探りだす直感的な領域です。「マーケティングはクリエイティブである」という言葉もありますが、多くの人がインターネットと接点を持つ今、創造的な視点からのデジタルデータの扱いはこれからのメディカルデザインやクリエイティブの新しい形を提案するように思いました。