企業の広報の方だろうと、出版社の編集者さんだろうと、やり取りを繰り返すなかで原稿の文字量というものは、だいたい増えていくものです。
会議して、あれも言わなきゃいけない、これも言わなきゃいけないと先輩や上司から指摘されるのかもしれません。特に自分が書いたもの、作ったものを削るのは無意識的な躊躇があるから勇気が必要です。
なので、たまにズバッと減らす人に会うと、目が覚めるような思いがします。
そういう人は(失礼ながら)ボソボソしゃべるような地味な人だったりします。アートとかデザインに独自の考えがあるとか洗練された知性があるとか、そんな雰囲気もなく、異性にモテてきたとか、クラスや職場の中心人物だったとかも(まことに失礼ながら)なさそうです。
出世欲とか野心めいたものも感じさせず、おそらく、かなり普通の人(普通の人などこの世にはいないといういい例ですね)。
ただ直感なのか、ほぼ素人なのに、要素を一気に減らしてコンセプトだけを残すような離れ業を見せてくれます。社内政治より出世より、ただ眼の前のものを良りよくしたいという欲望に忠実なのでしょうか。一言で言えば、シンプル。
そんな人殆どいないように見えて結構いらっしゃるんです。普通の人みたいに見えますけど。私の知りうる限り、そういう人には大きな仕事が回ってきますね。
テキストが増えていくのは、当たり前だし驚きもありません。だからこそテキストや要素を減らせる人は、勇気ある人だと思います。