旧年中は心ある方々に支えられ、また未来において大きな糧となるであろう幸福な出会いに恵まれた一年でした。既知となったすべての方に深謝すると共に、本年も昨年同様、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。また多くの方にとって幸があり、実りある豊かな年となることを願っております。
去年は思想情操の形成において影響を受けた方が多く亡くなられたように思います。
その中でもデザイナーとしてAdrian Frutiger氏(1928-2015)に触れないわけにはいけません。書体デザイナーとしてUniversやFrutigerなど世界中で広く使われる欧文書体をデザインした方です。
Univers
icon-arrow-circle-right Linotype社のUnivers nextフォントファミリーの一覧
駆け出しのデザイナーだった頃の私は、スイス流グラフィックデザインのグリッドシステムに多大な影響を受け、高価な洋書を購入して読み漁っていたものでした。
それらの本の中で薦められていた書体が、HelveticaとFrutiger氏のUniversでした。以来、私は馬鹿の一つ覚えのように、自分がデザインを考える際にはUniversを使ってきました。その甲斐あったかなかったか、ここまでデザインに携わって生きてくることが出来たと考えています。Helveticaも素晴らしいのですが、今でも無人島に一つだけ書体を持って行ってよいと言われたら(?)Universにするでしょう。
2015年は法人設立をした年であると共に、Frutiger氏が亡くなった年ともなりました。私は自分の仕事の節目でもあるこの新年に、再び初心に帰り「馬鹿の一つ覚えのように」Frutiger氏の書体を使ってみたくなりました。この極東の島国で、美しくかつ機能的な欧文書体の恩恵を受けた、風変わりなデザイナーがいた証としても悪くないと思います。
今年の年賀状は、和文を除いたすべてをFrutiger氏のUniversとMeridienのファミリー書体を使用いたしました。ビジュアルは2016という数字を組み合わせて猿を描いております(片手を頭に乗せて「ウッキー!」としている姿です)。それは猿真似ばかりしてきた自分の姿でもあります。
新しいことに一から挑戦していくこと、初心を忘れないようにするための戒めでもあり、これからも猿回しの猿のごとく多くの方に笑顔をもたらすような仕事をしたいとの抱負を込めたつもりです。
また葉書は紙の選択、角丸などトランプのカードをイメージしております。猿回しから道化師=ジョーカーのイメージであり、お客様に切り札として思い出していただけると有り難いと考えております(そのつもりでみると、あなたが困った時に素敵な笑顔で手を振っている愛想のよい好青年にも見えてこないでしょうか?)。本年もよろしくお願い申し上げます。