「枯れた技術の水平思考」とは、任天堂でゲーム&ウォッチやゲームボーイの開発に携わった横井軍平さんの言葉です。先日発表されたNintendo SwitchのNintendo Laboをみて、この言葉を強く思い出しました。
icon-angle-double-right Nintendo Labo | Nintendo Switch | 任天堂
これ、すごいですよね。スマホゲーでガチャとかVRとか言っている時代にダンボール。先日5歳になった息子のワクワク感が想像できます。
息子はたまに空の段ボール箱を探してきて、自分で色を塗ったり切ったりして「新幹線」とか作っているので、子供はそういった遊びが大好きなんだと思います。最新のテクノロジーの時代にも任天堂のやっていることはブレないなと思い、原点である横井軍平さんに関する本を読みたくなりました。
「枯れた技術の水平思考」とは、もう見向きもされなくなった古いテクノロジー(枯れた技術)を違う分野に落とし込むことで、全く新しい価値を生み出すことです。ゲーム&ウォッチは、電卓のおかげであり余っていた液晶を使用することで低コストを実現して大ヒットとなり、ファミコンの足がかりとなったというのは有名な話です。
書籍は、様々な媒体に掲載された横井さんのインタビューを取り集めた形になっております。「まだ世界にはないものを生み出すことで新しい市場を創出し、独占する」「クリエイティブの本質はすきま産業」とか、これはもうそのまま現代のスタートアップ企業の考え方です。
「枯れた技術の水平思考」という言葉があまりにも有名な横井さんですが、こうやって通読してみると、クリエイションに対する根本的な考え方として、面白さの本質はテクノロジー(広い意味で技術と言ってよいでしょう)や装飾ではないということ、人と人の間にコミュニケーションを発生させることを重要視しているのがわかります。「囲碁や将棋にこれ以上やれることないかな、と考えたら色をつけるということになるが、これはもうゲームの発想ではなくなる」など、実に本質的です。
一方で、ゲームが文化として広がっていく過程で、そういったことが起こるのは当然としています。また、面白さの本質を男女の関係として捉えているところがユニークというか、頷かされる部分ですね。
現代はものすごい速度で新しい技術が生み出され、古くなっていく時代です。しかし最先端のテクノロジーを扱えるのは、ごく一部の人にすぎません。既存の文脈からずらして、新しい意味を創出する「枯れた技術の水平思考」は全ての人にとって有効な方法論となりうるのではないでしょうか。
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