「巨大化する現代アートビジネス」(著=ダニエル・グラネ&カトリーヌ・ラムール、訳=鳥取絹子)を読みました。
数十億円という作品が取引されることが当たり前となり、市場規模がこれまでにないほど膨れ上がった現代美術を、主に経済的側面から捉えた本です。美術の専門家ではない記者が、様々な有識者に取材したうえで書いているのでわかりやすい内容でした。
市場を動かしているのはたった100人ほどの億万長者やアーティスト、美術関係者であり、その人達の意向が世界の流行を作っていること。
作品の評価は、質や内容だけではなくコレクターやギャラリストの力によって左右されることなど。
現代アートが、億万長者のステータスシンボルとして、あるいは先鋭的なブランドや企業の差別化のツールとして機能しているということなど。
取引はまさに目眩がするような金額です。
元MITメディアラボの副所長ジョン・マエダは、「デザインはもはや決定的な差別化要因ではない」「いま、イノヴェイションはデザイン以外のところで生じる必要がある。それを簡単にいうと、アートの世界ということになる」と述べております。
(ジョン・マエダの考える「デザインを超えるもの」(2012.9.26)
ジョン・マエダが語っているのは現代美術そのものというより、より直接的に市場で機能する創造性の問題(端的に言って、限りなくアーティスティックなデザイン)だと思うのですが、方向性としては重なる部分もあります。
著書にも書かれているとおり市場において機能することが、現代美術にとって幸か不幸かはわかりません。「いいね!」を集める価値に集約されるように、市場において内容は置き去りにされがちです。
しかし、そこで行われていることは、我々が日常接している経済活動のもっとも先鋭的な側面だと思います。