現代美術家の杉本博司さんが手掛ける江之浦測候所に行きました。
日本を中心に美術史を引用して作り上げた観念の庭とでも言うべき空間です。曇り空に小雨が降り続く一日でしたが、むしろよかったのではないかと思います。
西洋と東洋
私は芸術の専門家でも医学の専門家でもありませんが、芸術家にも医家にも知己がいるので時々思うことがあります。
医療に従事する方々をはじめ我々は、西洋医学と東洋医学を分けて考えています。我々が通常「病院へ行く」と言えば西洋医学にかかることです(もちろん昨今の医療は、西洋と東洋を悪戯に対置して優劣を論じたりするものではありません)。
しかし、現代美術に携わる方は、自分の仕事が西洋美術なのか東洋美術なのかという線引はあるのだろうか、と。
それは無意味な定義なのかもしれませんが、日本における現代芸術は、専門家ではないことを差し引いてもわかりづらい部分があります。それは作品に謎があるとか内容が難しいというより、ある種の構造的な不明瞭さであり、曖昧さです。
もっともそれは、西洋と東洋の曖昧さの中に生きる全ての日本人が背負うべきものなのかもしれませんが。
杉本博司さんは日本美術的なモチーフを使用していますが、明らかに西洋美術を意識した仕事を行っており、日本的でありながらも非常に日本人離れしています。