仕事で近くまで行くので、汐留のD&AD賞の展覧会を見てきました。
D&AD賞とは英国で行われている国際的にも評価が高い広告賞で、非常に幅広い分野においてデザイン・広告を評価することも特徴です。展示スペース自体はそこまで広くなかったのですが、主要な賞を、動画とファイルで網羅することができました。
こういったデザインの流れを主導するような国際賞を見ると、日本のデザイン・広告業は遅れている…というよりちょっと方向性が変わっているな、と思います。国際的な広告・デザイン賞において主流なのは、文面でも触れられているように「世界をより良くする」ための、社会問題に対する具体的かつ直接的なアクションであるのに対して、日本の参加者は技術的(純粋デザインとでも言うべきでしょうか)、情緒的な部分を多く含む迂遠的なアピールが強い傾向があります。
例えばBlackPencil(最高賞)を受賞した#LikeAGirlは、性差とその無意識的な抑圧を扱った、ある種の問題提起です。
<Always #LikeAGirl>
こちらも最高賞ですが、通常ならば廃棄されるだけの形の悪い野菜を、味や栄養は変わらないことをきちんとアピールし、安い価格で提供するキャンペーンです。プロモーショナルでありながら農家やスーパーの利益に結びつけるだけではない、消費社会における問題提起を含めたストーリーの広がりがあります。
<Inglorious Fruits and Vegetables>
また当時も話題になりましたが、Greenpeaceが行った大手玩具メーカーに石油会社との提携解消を呼びかけたプロジェクトなど過激ですらあり、広告そのもののアイデンティティを問うていると言えるでしょう。
<LEGO: Everything is NOT awesome.>
上海における交通事故の被害者に事故多発現場で標識を掲げてもらうプロジェクトなど、ただの営利もしくは文化的活動にくくれない強さがあります。
<Buick – Human Traffic Signs>
一般の方が、こういった事例を「外国は過激だな」というある種の例外的な感覚で済ますのは仕方ないとしても、日本のプロフェッショナル達の反応が同じくらい鈍いのは、少し残念なことです。
もちろん一方では、デザイン・広告賞らしく紙卸商社のブランディングキャンペーンなども評価されますし、そういった仕事の評価を貶めるものではありません。
<G . F Smith Award:Black Pencil>
日本が世界に対して築いたポジションはある種独特なもので、全てが一様にというわけではないですが、自分たちの行うことが世の中に影響を与える、端的に言って社会にコミットメントするという意識が希薄なのではないか、と感じます。