デザイナーが触った9.7inch iPad ProとApple Pencilの感想…「Wow!」って感じです

9.7inch iPad ProとApple Pencilを手に入れて、一ヶ月近くが経ちました。実に初代以来のiPadです。
長らくタブレットとは縁を持たずにいましたが、iPad Proについては12.9inchが登場して以来、ずっと気にかかっていました。特にPencilです。というのも私の仕事においては、デザイナーやイラストレーターさんに仕事を依頼する機会が多く、アイディアを適確かつスピーディに「伝わる形」にする必要があるからです。Pencilはそれにうってつけのように思えました。しかし、apple storeで見た12.9inch iPad Proはやはり大きい印象…だったので、小さいサイズが出ないかとずっと待っていました。

■ ペンで描くということ

アイディアのラフ(原型)を人に伝える際に、その速さ☓精度において「ペンで描く(書く)」ことを超える方法は今もってないと言ってよいでしょう。ならば、デジタルならではの解決方法を探すのではなく、デジタルにアナログな手法の再現性をもたせることが重要なのだと思います。「紙にペンで書く」という感覚を、どれだけデジタルのフィールドに載せられるのか。

これまでは、紙にラフを描いてスキャニングして送信、また文字直しやレイアウトのバランスを調整したい時は、プリントアウトしたものに赤ペンで書き込み、それをスキャニングしてまた送信…などといった実務の手間がありました。また個人的にもデザインの表現形が、マウスとキーボードというデバイス、Illustratorに代表されるようなアプリケーションで実現しやすい形に落ち着いてしまうことに、ずっと不満を感じていたのです。さりとて本格的なドローイングソフトやペンタブレットを買うほどではない、だからといって安価なペンタブレットを購入してみたけれどしっくりこない、といった感じでした。
ほんの一手間を減らすということ。職人技のプロフェッショナルなニーズに応えるというより、ある種の軽やかさ、手軽にアイディアを表現すること。iPad Proはそのニーズに満点に近いかたちで応えてくれたと思います。

■ アナログの再現性

タブレット上に描いたラフは、すでにデジタルデータなのです。画像データに「手で」ワンアイディアを盛り込めること。pdfファイルに直接「ペンで」書き込めること。
これはデジタルとアナログが交差する革新的な経験で、個人的には初めてadobeソフトを触ったときの感動を思い出します。実際に私は、プレゼンに向かう途中で閃いたアイディアを電車の中でまとめ、それをそのままネットプリントサービスに送信、駅近くのコンビニエンスストアで出力し、プレゼンに臨みました。ノートPCでも不可能ではありませんが、そういったことが実に簡単になったことは驚異的と言えます。

もちろん不満も残ります。実はこの一ヶ月ほどで、pencilを二回ほど地面に落としてしまったのですが、その度にpencil充電部のフタがどこかへ飛んでいってしまいました。結構勢い良く飛びます、これ。なくしちゃう人いるだろうなあ…と思ったのと、ネットでもさんざん言われているipadに差し込むという充電の方法。実は専用ソケットを差し込むことで、ipad用アダプターからも充電できるのですが、そのソケットの小さいこと。これも絶対なくす人いるでしょう(私かもしれませんが…)。Pencilはまだ改良の余地ありです。
細かい部分では、ペンの描き心地、アプリ間の連携、アナログなテクスチャの再現性…。人を前にして描くならば、やはり紙にペンの方がまだしっくりきます。しかし逆に言えば、そういった体験が実務に耐えうるレベルに到達しているということと、わかりやすい伸びしろや成長性があるということを感じました。


私が特に使いやすいと感じたアプリは、「Procreate」と「GoodNotes 4」です。どちらも「手で描く」という感覚を高い水準でタブレット上に実現してくれました。久しぶりに絵心を刺激されたりして、こういったツールが当たり前のように普及すれば、「コンピューター技術があるからこそ」成立するクリエイターもまた増えるのではないでしょうか。
〈Procreate – App Store〉
〈GoodNotes 4 – メモ&PDF – App Store〉