展覧会を観た後、同じデザイナーによって書かれた「カーボン・アスリート 美しい義足に描く夢」を読了いたしました。高名なプロダクトデザイナーではあるが、全く未経験であるアスリート用の義足デザインに踏み込んでいった著者の挑戦について書かれています。アスリートや義肢装具士、義肢メーカー、学生と協力しながら、「美しい義足」を創作するプロセスについて詳細にかかれておりました。それはほとんど素人といってよい立場から、失敗や摩擦を繰り返しつつ多くを学び、更にデザイナーとして何かプラスアルファを提供するということです。
私自身のボランティアの経験から、心の壁を感じることはよく理解できました。その意味で私にとっては、耳に痛い話でもあります。「この人は何をしにきたんだろう?」あるいは「すぐにいなくなっていくのではないか」という眼差し。場違い感。
それは新しい領域に首を突っ込もうとすれば、誰しもが感じることなのかもしれませんが、特にセンシティブな領域において表に現れない人の心の深い部分に入っていかねばならない難しさです。私には何か新しいものを提供するほどの力はないかもしれない。どうやって、そういったものを乗り越えるのか。
美しいものや可愛いものを身につけたいというのは、誰しもが持つ素朴な感情です。デザインにかぎらず、社会に役立つ創造的な行動とは、技術や知識を基礎としつつも、極めて人間的かつ当たり前な感情に寄り添ったものなのだと思います。