デザイン・形・抽象と本質

子供はデザインの本質を見抜くのが驚くほど上手いということを、大人は知らない

 ちょっと美意識の高い人だったら抽象的なオブジェやアートだと思うかもしれません。これは一体なんなのか、子供だったらすぐにわかります。上に乗って揺らして遊べる遊具ですね。

 これは、ショッピングモールの屋上にあったものです。公園の遊具としては珍しいものではなく、どこでも見かけることができるものですが、公園においてあるものは動物だったり車だったり、他のものをデフォルメして作られています。

 デフォルメは記号化とも言えます。可愛らしい外観は、大人にとって「子供向け」であることの記号となり、子供にとっては「遊び道具」となります。

不要なものを削ぎ落とし、コンセプトをはっきりさせたデザインは強い

 しかし子供は、具体的に記号化されていない玩具でも遊ぶことができます。動物を模倣しているから楽しいのではなく、それが「グラグラすること」が純粋に楽しいのです。可愛いということが必須ではありません。これらはどこまでがデザイン上の必須な機能で、どれが無関係な装飾であるのかといった問題を提起します。
 
 子供がこれらの遊具の本質を瞬時に理解できるのは、公園の遊具で遊んだ経験を踏まえています。そうすると、若い家族連れをターゲットにする洗練されたショッピングモールには、子供向けの遊具は大切でも、可愛い動物のイメージは必ずしも必須ではないのです。

 作り手の都合ではなく、使う人の必要性を考慮すれば、適切なデザインは時と場所、場合によって、無限に細分化され異なってくるものです。大人を相手にしても本質は変わりません。