因果関係があるということ(原因→結果の関係)と、相関関係がある(関係はあるが因果関係ではないもの)ことは全くの別物である―因果関係と相関関係を混同してしまうと、誤った判断のもとになってしまう。
例えば「健診を受けること」と「長生きできること」は、同時に起こっているだけの相関関係にすぎず、因果関係ではない…など我々が普段「なんとなく」信じている常識がいかに科学的根拠(エビデンス)に乏しい思い込みかということ、「相関関係と因果関係の正しい見分け方(=因果推論)」を丁寧に解説してくれています。
本書の中でも触れられているように、エビデンスを厳密な根拠にした政策や事業経営は、海外では常識的な考え方であり、専門家の領域を超えて我々日本人の日常にも広まりつつあります。
様々なデータが集まりやすくなった現代において統計学は需要が高まっていますが、逆に「もっともらしい」数字を見せられると、すぐに信じてしまいそうになり、何を根拠に考えるべきかがわかりません。特に医療分野においては、日常で接しているデータとの正しい距離の取り方を考えさせられます。
著者のお一人は公衆衛生学の研究者ですが、医療関係の話は限定的で、また統計学らしい数式や専門用語を極力抑えたわかりやすい本です。統計学のプロセスや方法論を具体的に学びたい方には少々物足りないかもしれませんが、医学におけるエビデンスという概念を理解する一助にもなるのではないでしょうか。公衆衛生学や疫学の専門書に時々辟易する私にはわかりやすい内容でした。本書において勧められていた書籍も読みたいと思います。
「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法〈中室牧子(著), 津川友介(著)〉amazon
医療政策学×医療経済学(著者のブログ)